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Author:ぱすてぃ
百合が好きでポケモンを好む、文章を書く人です。
好みのゲームは任天堂系/テイルズはじめRPG全般/デモンズ・ダークソウルなど。
百合は小説漫画といろいろ。百合文も書きたいです。

【ドラクエ10】
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ポケットパスタ・ゲーム記
ゲームのプレイ日記を書きたい分だけ書くブログです。3DS「RPGツクールフェス」で『かけらのメガルエ』を第1回コンテストに投稿中。
第十五話「ピエロギャラクシーというわけではないです」
伊坂幸太郎『重力ピエロ』を読みました。感想、行きましょう。

重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
4101250235


……重力っつーのは個人的にちょっと気になってます。
 さて、今回は『ゴールデンスランバー』等で知られる現代小説の人気作家、伊坂幸太郎の作品です。結構ボリュームがあり、読むのに二日かかりました。

◆『重力ピエロ』(伊坂幸太郎、新潮文庫・2006年、473P)

○ざっとはじめに
 ……伊坂作品は今回が初読です。そもそも大学入学まで一般小説にほとんど疎かったラノベ読みの人間で、2年以上経過した最近になってようやく、現代の作家に興味が湧いてきた感じなので、とりあえず名前知ってるところから、って感じです。つまり感想とかに作家論とかは入っておりませんのでひとつ。

○あらすじ(ネタバレあり)
 主人公・泉水には、芸術的感性鋭い弟の春、癌に冒されて闘病生活を送る父、既に他界してしまった母がいる。母はかつて強姦の被害に遭い、春はその際に身ごもった子であるという暗い過去を持つ家庭は、しかし父親の優しさを柱として、母が失われた今も存続していた。
 その泉水の勤務する遺伝子関係の会社のビルが、何者かの放火によって火災の被害にあった。
 そんな折、弟の春から電話が掛かってくる。彼は、そのビルが放火されることが分かっていたという。泉水と春は共に放火の真相を探り始める。
 病と戦いながらも興味と好奇心を持って息子たちの謎解きに加わる父も交え、事件現場の近くに描かれる謎のグラフィティアートや、そこに秘められた遺伝子にかかわるメッセージが、泉水の手によって少しずつ明らかにされていく。春の行動を監視しているという郷田順子という女性も泉水の前に現れ、事件は複雑化していく。
 一方で泉水はまた、葛城という売春斡旋業を行う男の動向を探っていた。会社のサービスで遺伝子調査を請け負い、その結果を聞いた泉水は、自分の追い求めていた一つの真実に達する。
 
 放火現場の張り込みを行う泉水と春。しかし、二度目の張り込みの際、泉水は春が仕込んだ睡眠薬によって眠らされ、弟を見失ってしまう。その後、彼は事件の真相に確信を持つことになる。
 放火の犯人は、弟の春だった。彼の目的は、とある人物を反省させること。それが、売春斡旋を行っている葛城であった。葛城は名前を変えていたものの、その正体はかつて泉水の母を犯し、一度は逮捕された男だった。連続強姦事件を引き起こした葛城に、そのかつての犯行現場にあたる場所で放火を行い、自らの行いを省みさせる。それが春の目的である。しかし、葛城は自らの罪を反省するどころか、むしろ悪意を肯定する態度で春と対峙する。殺意を明らかにした春に、葛城は「父親を殺すのか、おまえ」と言い放つ。遺伝子上、そこに否定しうる要素はない。しかし春は、「俺の父親は今、病院で癌と戦っているあの人だよ。悪いけど」と言い、なおも言葉を重ねる葛城を、春はバットで殴り殺した。

 放火の後、殺人を犯した春。しかし兄である泉水は、自首しようとする弟を制止した。そこには、単純に弟を守ろうとする想いだけでなく、実は自分自身も葛城を殺す計画を立てていたことへの思いもあった。
 父親は、泉水と春が行ったことを察知していた風があった。しかし彼は「何も無かった」と隠す春に対し、「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」と返すのを最後に、事件への追求を終わらせた。
 
 家庭を繋ぎとめていた父親は、その後癌の悪化で他界する。その火葬が行われた煙突を見ながら、しかし泉水と春は穏やかな心持ちで言葉を交し合った。立ち上った火葬の煙を見て、二人は空へ向かえと叫んだ。 ……うわあ長え!


○感想
・まず第一に言いたいのは、この話はとても良質の「兄弟愛、家族愛」の物語に感じられたということです。主人公は恐らく三十代で、弟は強姦魔によって生まれた父親違い。さらに母親は既に他界していて、そして父親も癌に臥せっているという、この家族間での陰鬱な争いが描かれても可笑しくないような状況です。
 なので、冒頭しばらくは泉水と春の確執が描かれるイヤーな話なのかなぁと思っていたら、それとは正反対の方向性の作品で驚きましたし、すごく感動しました。

・なんといっても、父親のキャラが素晴らしいですね。泉水が語ってますが、見た目は冴えない中年の公務員なのに、「数回会って会話する程度では、父の価値はわからない」という深みを持っていることが序盤で示されます。
で、春を身ごもった話を聞いた時にすぐ「よし、産もう」というこの決断。ここでもう、私としては父親にベタ惚れなわけです。普通、妻が犯されたことによって身ごもった子にそんな決断を下せる人間はいません。物語終盤で「遺伝子上の父」である葛城が春に対して、おまえは俺のお陰で生まれたんだ、みたいなことを言いますが、本当に春をこの世に誕生させたのは、他ならぬ父親の意志あってのものではないでしょうか。
 終盤でのセリフ、「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」。これなんかもう、最高です。この時、話題は春が事件を起こしたことを父親に言うべきかという問題なのですが、この問題の影には、生物学上は実の父ではないという二人の親子関係も潜んでいるように思えます。父はそれをほとんど無意識であるかのように汲み取り、読んでる側にも一瞬特別な言葉でないようなひそやかさで「俺に似て」という言葉を挟みこみます。それによって春は完全に家族として再び承認され、また泉水の心にも温かな思いを与え、その場にあった問題をすべて吹き飛ばしてしまいました。この「俺に似て」は、たぶん父からしたらそれこそ意識せずに出た言葉なのかなと思います。それがまた、地味なはずなのに魅力溢れるキャラを存分に引き立てているんだと思います。
「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。俺たちは最強の家族だ」というセリフは序盤に出てきますが、その人格を最後まで保ってみせる強さが、父には見られました。

・でも、作中では他界してますが、「数回会って会話する程度では、父の価値はわからない」この父をはじめて話しただけで一発で見初めた母親もまた、間違いなく「最強の家族」の一員だと思います。若い頃のエピソードが語られているということも考慮すべきではありますが、言葉から伝わってくる人物像は、物事に憂うことがない快活さに満ち溢れています。
 けれど、彼女は決して個人では無敵ではありません。強姦されたという事実は男の力に屈してしまう現実性を読み手に植えつけますし、競馬場での男との賭けもまた、子どもたちには心配させないと振舞っていながら自分は震えています。だから決して、彼女は「屈強な精神の持ち主」というわけではないんだと思います。ただ、自分の子どもを愛する力の強さによって、自分の弱さを補うことにもとても長けていて、泉水と春に強さを与えていた。それが彼女の魅力なんだと思います。

・この作品は、いちおうカテゴリとしてはミステリに分類されると思います。ですが、放火事件とそれに関る遺伝子の要素は、家族愛を描くためのアンチ存在にすぎないと思いました。
 主人公の泉水は遺伝子企業に勤め、物語のトリックを解き明かす際にその知識を存分に活用しています。しかし一方で、遺伝子による命の繋がりを認めると、自分の弟を自分の家族として否定してしまうという背反が待っていて、物語を通して、彼はこの点で春に対して距離を置いているところがあるように感じられました。兄弟仲はよく、泉水もそれを望んでいるんですが、事実は事実としてそこに存在しており、それに苦しんでいると思えました。
 そして彼は、前述の「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」という父の言葉を聞き、そんな悩みはただ理屈に縛り付けられていただけに過ぎなかったということに気付き、「本当の家族」を明確に見出します。
 ミステリ部分を解くためのキーワードが、人物関係部分の解答を得た際に打ち捨てられることになる。そういう面で、これは本当にミステリなのかなという気がしました。事件の真実も、捻りなく予想できる構成にしてありますしね。

・セリフの妙がすごく魅力でした。こんなテンポのいいやりとりを書けたら……
 :「もったいぶるなよ」「もったいぶるのは、知っている者の特権なんだって」
 「急かすのは、知らない者の特権だよ。もしくは兄貴の特権だ」
 :「兄貴も気をつけたほうがいい。まっすぐに行こうと思えば思うほど、道を逸れるものだからね。生きていくのと一緒だよ。まっすぐに生きていこうと思えば、どこかで折れてしまう。かと言って、曲がれ曲がれ、と思ってると本当に曲がる」
 「カーブしか投げられないピッチャーみたいだなあ」
 「フォークしか投げられない投手よりはましだけど」「落ちていくだけってことか」

 とか、ポイントは“相手の直前の言葉を受け、ひっくり返す”ことに思えるんですが、到底マネできる気がしません。でもマネしたい!
 私の文章は、基本的に会話だけで物事の考えを進めるのが非常に苦手です。地の文の割合が多いことは悪いことではなく、こうしたセリフを回りくどく感じられる場合もあるのかもしれませんが、結局目指すところがラノベ的名ものである以上、こうした掛け合いは憧れです。
 なんとなく、こうした会話が得意な方ってネット小説書きの方にもいて、一体みんなどーやってそんな言葉を捻ってきてるんだと思ってましたが、みんなこういう現代小説読んでるんですね! って気がしました。くそっ、高校の時にちょっとでもこっちの良さを知っていれば……い、今からでも読みますっ!

・ちょっとwikipediaを見たりしたんですが、どうやら伊坂作品って他の長編のキャラが出てきたりするらしいですね。春と探偵の黒澤が別の話に出てくるということで、ものすごく気になります。そのあたり、やはりエンターテイメントとして小説を書いている方向なのかなと思いますが、それでも会話や心情に出てくる様々な分野の知識はエンタメには似合わないほどで、それが巧い具合に混ざり合ってると思いました。

○まとめますが、こうやって「おだやかな愛情」を扱う作品でも、素晴らしいものは素晴らしく、評価されるんだなと思いました。
 ひとつエピソードを持ってくると、物語中盤で、春が一冊のノートに歴史に名を残すような偉人の名前を、「チャイコフスキー、タキトゥス、アインシュタイン、ゴーギャン、グレン・グールド」の羅列をひたすらひたすら書きまくっているという、不気味な事実を泉水が知ることになります。しかし終盤で明かされるその正体は、それぞれの人物の頭文字である「TTAGGG」が細胞の寿命を司る“テロメア”を示す遺伝子学上の記号であり、「テロメアを長く伸ばし続ける→父の寿命がちょっとでも伸びるようにという願掛け」であったという、とんでもなく穏やかで健気なものでした。物語に使われた遺伝子のことは、すべて別方向から家族愛に集約されていきます。
 また、ラストシーンも事件や過去の重さを全く感じさせない、幸福に満ち溢れたものでした。このとき、春は結局自首していない→社会によって罪を明らかにされないまま終わってしまうので、秩序や倫理を重んじる人にとっては、このラストは受け入れがたいのかもしれません。
 ですが、私としては、物語の主題は「最強の家族」の幸せにあるという風に考えをシフトさせてみればどうかなぁと思ってしまいます。もともと物語内では倫理や秩序なんぞクソ食らえな人間なので最初からここで悩むことは無かったんですが、主人公が社会秩序から脱したのなら、読む側も一度そこから離れて考えてみたりしてみると楽しいんじゃないか、って思います。
 これは作品とは関係ありませんが、以前、大学のゼミで田山花袋の『少女病』を取り扱ったとき、発表スタンスが頭ごなしに主人公の非社会性の否定に終始していて、釈然としない思いを抱えたことがありました(いやあ発言して反論するためのまとめ力が欲しいですねぇー)。そこ突くんだったら別にこの作品選ぶ意味なくね? という。私に批判力というものが足りてないことは重々承知しておりますが、せっかく一つの作品を読むのなら出来るだけ自分にとってプラスになる要素、吸収することによって活かしていける要素を獲得する姿勢を持つというのも悪くないんじゃないかな、というのが私の考えです。いや、批判しつつ自分に還元していけるのが最強だとは思いますけどね。それには並々ならぬ知識と読解力が必要で……うーむ、ゲームならそんな風に論じれたりしますかね。

 ……伊坂幸太郎が有名で人気な理由は、とりあえず分かった気がします。今のところ初読候補として村上春樹、石田衣良、村上龍あたりが手持ちなんですが…………つ、次はラノベでも読もっかなー……。

 それでは、今日はこのへんで。この作品のセリフトレース、やってみたいかなって思います。気になったセリフには印をつけておきましたので。
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